『とある成婚物語 ~34歳K君の場合 ①』

これまで、やりたいと思ったことは全部やってきた。残すところは『結婚』だけだ。
だから僕は、33歳になった日、インターネットで『広島』『婚活』と検索をしてみた

検索の結果、初めて申し込んだ“婚活セミナー”の講師が、あいこ先生だった。
これまで真剣に婚活をしたことのなかった僕にとって、先生の話は衝撃的だった。
「独身の人が多いのは何故か?」
「婚活を始めたのに、途中でやめてしまう理由は何か?」
「妥当な相手を選ぶことと、妥協することの違い」……などなど。
最も心に残ったのが、「自分から動かなければ出会いは来ない!」という言葉だった。

あいこ先生の教えを胸に、僕は地元の婚活パーティに参加したり、
知り合いから女性を紹介してもらったりした。
だけど、どうも上手くいかなかった。
運よく女性と連絡先を交換できても、一度デートをしただけで終わる事が多いのだ。
僕は人見知りだ。初めて会う女性と話すときは緊張してしまい、
何も喋れなくなるか、妙な事を口走ってしまう(これは女性に限った話ではないが……)。
「どうやったら、交際に繋げる事ができるのだろう?」
そんな苦悩の日々を送っていた僕のところへ、あいこ先生からメールが届いた。

「先日はセミナーへの参加ありがとうございました。その後、いかがですか?
 来月、婚活パーティがあるのですが、参加してみませんか?」
そのメールが、僕の婚活の転機となった。

「ぜひ参加したいです」と返信をすると
「それでは参加申込書をお渡しします。諸注意もありますので、会って話しましょう」とのこと。
僕とあいこ先生は、早速、小さなカフェで待ち合わせた。
「当日は、ちゃんと身だしなみを整えてきて下さいね。
 服装だけでなく、髪型・顔周り・全身とくまなくチャックして。
 眉毛のむだ毛や鼻毛、ひげのそり残し……よく鏡を見るのよ。」
そんなことから始まり、パーティでの会話についても、
「男性がよく失敗することを伝えるわね。自分の事ばかり、一方的にしゃべらないこと。
 相手の女性の事をいろいろ聞いてあげること。
 交換したシートをよく見て、相手に関心を持つこと。
 相手の顔を見る事が苦手でも、ずーっと下を向かないで、
 時々は顔を見るように気をつけておくのよ。それから……」
あいこ先生はとても親切、丁寧にパーティ参加の心得を教えてくれた。

そうして迎えた、パーティ当日。
緊張のあまり頭がまっしろになった僕は、先生の教えを何一つ実践できなかった。
かろうじて1名とマッチングし、後日お見合いをすることになったが、
お見合当日はまたまた緊張、何を話したのかよくわからないまま終了した。
お見合いの結果は、もちろんお断りだった。

「お断りされたけれど、思いやりのある本当に素敵な女性でした」
負け惜しみのように呟いた僕を、あいこ先生は励ましてくれた。
「落ち込んでいても仕方がないわ。ただ、素敵だなと思える人と会えた事は良かったね。
 今回の経験を無駄にしないように、これからは○○○○に気をつけなさいよ」
そんな言葉をかけてもらったのは初めてだった。

”あいこ先生の元で婚活すれば、僕も変われるかもしれない”
 気づけば僕は「Fair-windへ入会します。先生と婚活したいです!」と口走っていた。